東京高等裁判所 平成11年(行コ)186号 判決
主文
一 原判決を取り消す。
二 本件を東京地方裁判所に差し戻す。
事実
第一当事者の求める裁判
一 控訴人
主文と同旨
二 被控訴人ら
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
第二事案の概要
控訴人の原審平成一一年(行ウ)第三五号事件(以下「三五号事件」という。)の訴状(同年二月二五日訴え提起)記載の請求は、「東京国税不服審判所長太田幸夫」を被告として、「原告の平成八年一二月二七日付法人税額等の更正通知書及び加算税の賦課通知書(麹法(法)特第二五八六号、同二五八七号、同二五八八号、同五〇四一号、同五〇四二号)に基づく課税処分について東京国税不服審判所長のなした平成一〇年一一月二〇日付裁決を取り消す。」旨の判決を求めるというものであり、また、行政事件訴訟法一九条に基づき、三五号事件に追加的に併合提起された控訴人の原審平成一一年(行ウ)第六五号事件(以下「六五号事件」という。)の訴状(同年三月二四日訴え提起)記載の請求は、「麹町税務署長」を被告として、「原告の平成八年一二月二七日付法人税額等の更正通知書及び加算税の賦課通知書(麹(法)特第二五八六号、同二五八七号、同二五八八号、同五〇四一号、同五〇四二号)に基づく課税処分を取り消す。」旨の判決を求めるというものであり、その理由は、いずれも、右裁決又は課税処分に理由不備及び事実誤認の違法があるというものである。
右各事件につき、被控訴人らは、いずれも、本案前の答弁として訴え却下の判決を求め、その理由として、被控訴人東京国税不服審判所長は、同被控訴人は控訴人が取消しを求める裁決をした行政庁ではなく、同被控訴人を被告とする訴えは、被告適格を欠く者に対する訴えとして不適法である旨主張し、また、被控訴人麹町税務署長は、三五号事件は被告を誤った訴えとして不適法であり、これに追加的に併合提起された六五号事件は、控訴人が取消しを求める同被控訴人のした課税処分から三か月以上を経過した後に提起された訴えであり、出訴期間を徒過したものとして行政事件訴訟法一四条に違反し不適法である旨主張するところ、控訴人は、三五号事件の被告は東京国税不服審判所長ではなく国税不服審判所長であり、右事件の訴状の被告の表示は単なる名称の誤記であるから、右訴えは適法であり、したがって、これに併合提起された六五号事件も行政事件訴訟法一九条、一四条の出訴期間の遵守に欠けるところはなく適法である旨主張するものである。
理由
一 当裁判所は、本件各訴えは、いずれも適法であると判断する。その理由は、次のとおり訂正し、付加し、又は削除するほかは、原判決の事実及び理由欄(ただし、五を除く。)に説示のとおりであるから、これをここに引用する。
1 原判決三頁二行目の次に行を改めて
「1 控訴人は、控訴人の平成四年七月期(平成三年八月一日から平成四年七月三一日まで)、平成五年七月期(平成四年八月一日から平成五年七月三一日まで)及び平成六年七月期(平成五年八月一日から平成六年七月三一日まで)(以下、右各事業年度を合わせて「本件各事業年度」という。)につき、いずれも法定申告期限内に青色申告による法人税の各確定申告(以下「本件各確定申告」という。)をした。
2 控訴人の本件各確定申告に対し、麹町税務署長は、平成八年一二月二七日付けで、本件各事業年度につき、法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分を、また、平成四年七月課税事業年度(平成三年八月一日から平成四年七月三一日まで)及び平成五年七月課税事業年度(平成四年八月一日から平成五年七月三一日まで)につき、法人特別税の各決定処分及び重加算税の各賦課決定処分(以下、これら各処分を合わせて「本件各処分」という。)をそれぞれした。
3 控訴人は、本件各処分を不服として、麹町税務署長に対し、平成九年一月二四日に右法人税各更正処分及び重加算税各賦課決定処分につき、同年二月一〇日に法人特別税各決定処分及び重加算税各賦課決定処分につき、それぞれ異議申立てをしたところ、麹町税務署長は、同年四月二四日、右異議申立てをすべて棄却する旨の決定(以下「本件各異議決定」という。)をした。
4 控訴人は、本件各異議決定を不服として、平成九年五月二一日、国税不服審判所長に対し、本件各処分の取消しを求めて、審査請求をしたところ、国税不服審判所長は、平成一〇年一一月二〇日、右審査請求をすべて棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をし、控訴人は、同月二五日以降、右裁決書謄本(甲第一号証。以下「本件裁決書」という。) の送付を受けた。」
を加え、同三行目の「1」を「5」と改め、同行目の「当裁判所に」の次に「、三五号事件として」を、同八行目の「訴状を」の次に「甲第一号証の本件裁決書とともに」をそれぞれ加え、同九行目の「(」から「)」までを削る。
2 原判決四頁一行目の「2」を「6」と、同五行目の「3」を「7」とそれぞれ改め、同五行目の「当裁判所に対し」の次に「、六五号事件として」を加え、同一一行目の「(」から同一二行目の「)」までを削り、同行目の「2」を「6」と改める。
3 原判決五頁一行目の「4」を「8」と、同四行目の「5」を「9」と、同一二行目の「6」を「10」とそれぞれ改める。
4 原判決六頁三行目の「原告」から同一三行目の「本件訴状」までを「三五号事件の被告及び請求について検討するに、確かに同事件の訴状」と改める。
5 原判決七頁五行目から同六行目にかけての「からすれば」から同一〇行目の「内容」までを削り、同一三行目の「こと」の次に「が認められ、右によれば、控訴人が三五号事件の訴状において被告としたのは東京国税不服審判所長であると認めるべきかのようではある。しかしながら、控訴人は、右訴状とともに本件裁決書を甲第一号証として提出しているのであるから、右訴状に記載された請求の趣旨及び原因並びに本件裁決書の記載を善解し、かつ、東京国税不服審判所長が裁決庁でないことにかんがみれば、控訴人が三五号事件の訴状において被告にしようとしたのが国税不服審判所長であり、そして、控訴人は右事件において国税不服審判所長がした甲第一号証に表示された本件裁決の取消しを求めようとしているものであると容易に認めることができるものというべきである。したがって、三五号事件の訴状に被告として表示された「東京国税不服審判所長」は、本来「国税不服審判所長」と記載すべき被告の表示を単に誤記したにすぎないものと認めるのが相当である。そして、三五号事件は、控訴人が本件裁決を知ってから三か月の出訴期間内に提起されたものであることは明らかである。もっとも、三五号事件の訴状及び委任状の記載は、右のとおりであり、また」を加える。
6 原判決八頁五行目の「などの」から同七行目の「記載したものであるものとも」までを「が認められるが、右は、国税不服審判所の組織ないし権限、税務訴訟における原処分・原処分庁又は裁決・裁決庁の関係等に対する控訴人の理解不足とこれからくる混乱によるものと推察されるところであって、これらの事実も、前記のとおり、訴状等の記載を善解し、三五号事件の被告が国税不服審判所長であり、同事件の訴状における被告の表示が誤記であると判断することの妨げとなる事情とは」と、同九行目から同一三行目までを
「 したがって、三五号事件は、国税不服審判所長に対する本件裁決の取消しを求める訴えとして適法というべきである。」
とそれぞれ改める。
7 原判決九頁一行目から同一〇行目までを削り、同一一行目の「四 また」を「三 ところで」と、同一三行目の「不適法」を「国税不服審判所長に対する本件裁決の取消しを求める訴えであり、右は、出訴期間の遵守に欠けるところのない適法」と、同行目の「三」を「二」と、同行目の「であるから」を「であり、本件裁決の原処分である麹町税務署長がした本件各処分の取消しを求める六五号事件は、三五号事件の関連事件として、右行政事件訴訟法の規定に基づき、これに追加的に併合提起することが許されるものであり、三五号事件が出訴期間の遵守に欠けるものでない以上」とそれぞれ改める。
8 原判決一〇頁三行目の「余地はない」を「ことになる」と改め、同四行目から同六行目までを削る。
二 よって、当裁判所の右判断と異なる原判決は不当であり、本件控訴は理由があるから、原判決を取り消した上、本件を東京地方裁判所に差し戻すこととして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石井健吾 裁判官 櫻井登美雄 裁判官 加藤謙一)